2020-07-18

insulaさん(鉱物ジュエリーデザイナー)ロングインタビュー①

LUPOPOで不定期発行している小冊子「るぽぽのほん。」では、毎号おひとりずつLUPOPO作家さんのインタビューを巻頭に掲載しています。

今夏発行予定の「るぽぽのほん。vol.8」では鉱物ジュエリーデザイナー・insulaさんに登場して頂く予定で、そこへ向けたインタビューを先日行いました。

ところがインタビューが思いのほか長時間にわたり、その中で印象的なお話をたくさん、とてもたくさん聞けたので、なんだか誌面に収まるようにカットしてしまうのがもったいない!!ぜひみなさんにもシェアしたい……!!

と、急遽こちらのブログへ掲載することに。

 

ジュエリー?

なになに気になる、ドキドキ……でも宝石なんて高いもの、私にはあんまりご縁がないかも……?

 

そんな方にこそ、ぜひとも読んでみて頂きたいお話です。

(全3回に渡ってお届けします。)

1.JPG

profile——————————-

鉱物ジュエリーデザイナー insula(インシュラ)

神奈川の湘南出身、京都在住。指環を中心とした天然石のシンプルなアクセサリーを制作。石の持つ魅力を引き出すことを得意とする。年に数回LUPOPOで個展を行うほか、minneなどの通販でも活動中。

■Twitter:@insulas728 ■minne:minne.com/@insulas 

——————————————

 

—ハンドメイド関係ない話からで恐縮なんですけど。insulaさんは楽器をやられているんですよね?

はい、篠笛がすごい好きで。日本の横笛に興味を持ってて、篠笛と能管……お能で使う笛を吹いてます。

今は京都でお能の勉強をしてるんですよ。謡と仕舞。

—能に興味が出たきっかけは?

直接的なきっかけは能の講座に行ったことなんですけど。文章でしか知らない古典を音声にして実際に演ずることができるっていうのがおもしろかったのと、先生の教え方がめっちゃ分かりやすかったんです。

お能って、日常生活から全然違う世界にガツンと持ってってくれるんですよ。

異世界へ……鬼とか幽霊とかが出てくる世界へ連れてって、それが(話の最後で)成仏しちゃうんで、観終わった人は放心状態で「あー、成仏したー。じゃ帰ろっかー。」って。

そんなふうに1個別の体験をして日常に帰ってくるけど、帰ってきた後の自分は観に行く前の自分とちょっと違うみたいな。

2

それになるべくシンプルにいろんな景色を伝えるのがいいなって思って。

お能は、(手振りを交えながら)「あそこの山に、春の薄い黄緑色の紅葉が見えるね」「こっちは咲いたばかりの初桜が見えるね」って、遠近感と色の対比を少ない言葉と動きだけで演ずるんです。

それは観てる人が景色と経験を持ってないと、見えない世界。

3.JPG

私の作品もそうで、この石は別にこういう色で生まれただけですけど、見る人によって海だったり空だったり、そこにいろんな景色を見出してくれるわけじゃないですか。

私が名前をつけて、これはこういう景色ですってやるんじゃなくて、お客さんがそこに意味づけをして完成みたいな。

海の色っぽいよねとか、私は空が好きだから空に見える。ってお客さんそれぞれの目で見て頂くことで完成かなって。

そういうシンプルなところからの気持ちにアクセスしてくるものを作りたいなと思ってて。

それが(お能とハンドメイドとの)共通点と言えば、むりむり共通点。(笑)

4

—お客さんと石のあいだに生まれる有機的な何かも含めて「作品」っていう感じなんですね。

金属の部分にいろいろ装飾して個性を出す作家さんもいますけど、insulaさんの作品はほんとに石そのままを魅せる作風ですよね。

私は凝った加工ができないっていうのもあるんですけど(笑)、要らないかなって思って。

シンプルな、どシンプルな中から何が生まれるかっていうのがすごい面白くて。

私の指環作品には「魔法の指環」って名前をつけてるんですけど、別に装飾で魔法アイテムっぽいテイストに仕上げることってできるじゃないですか、魔法陣つけるとか。

それはそれですごい技術だけど、それよりもここと自分とのあいだに生まれるものを大事にしたいなと思って。それが魔法かなと。

—京都とかお能とか聞いたせいかもしれないですけど、作風がお寿司に似てるのかもしれないなって思いつきました。米!魚!以上!みたいな。

そうそう、そこにどれだけニュアンスを出すか?

言ってみれば誰でも作れるんですけど、どれだけこのかたちを気遣えるか、みたいなところかな。

お寿司だって、まあどれも大体同じかたちじゃないですか。(笑)

独創性出そうとするとカリフォルニアロールみたいになっちゃうけど、個性ってそうじゃないんじゃないかなと思ってて。

みんな同じかたちなんだけど、でもここがいい、この人のがいい、なんでかわかんないけど、ってところがいいなって。

—昔、パティシエさんのインタビューで読んだんですけど。

フランス料理はA+B=Cっていう味の構成をするのに、日本料理はA+B=A’ みたいな、Aの味を引き出すためのBっていう組み方をするんですって。お寿司もそうだと思うんですけど。

なんかこの指環はそのA’に似てる気がします。宝石の良さを引き出すためのシルバーみたいな。

そうですね。私、銀も好きなんですよ。言ってみれば銀も鉱物なんですよね。で石と銀がすごく有機的に結合するような形を目指して作っている。

ので、それが私のA’かなと。

—金よりも銀が好きですか?

うん、金はね、使いたい……よね。(笑)

5.JPG

—(笑)。それはお金的な問題ですか。

そうそう、今ね、高騰しちゃってるから。

この指環を作るのに2グラムくらい金が要るとすると、もうそれだけですごい値段になるので。

そうすると販売価格はケタが変わってくる。いつかはと思いますけど。

—石はどの石がいちばん好きですか?

ムーンストーンかな。長石っていわれる部類なんですけど、光の加減で色が変わるんです。ムーンストーンとかラブラドライトが好きですね。

6

—insulaさんが扱うのは、どれも色が変わったり虹が見えたりする石なんでしょうか?

たぶんジュエリーって百貨店で売ってるのしか見たことない人が多いと思うんですけど、そういう店では傷やムラのないもの、ルビーでいえば真っ赤なルビーが一番高いわけですよね。

でも、そこじゃない段階、いっこ手前の品質で、色ムラがあったり、傷がある石じゃないと虹は見えないんですよ。

—えー!!知らなかった。

クラックって言うんですけど、ちょっと亀裂が入ったとこに光が反射して虹になるんです。

—じゃあ傷があったほうがいいじゃないですか……!

そうなんです。昔はみんなグレードが高い石を求めてた時代があったんですよ、資産価値として。

でも傷とか内包物が入ってるほうが私は面白いと思うので、光の具合とか色のムラとかいろいろ混ざってるのを楽しんだり愛したりして頂けるといいかなと。

そういう石の中でなるべく綺麗なものを探して、手に取りやすい価格で出せたらいいなと思ってます。

—そのあたりの見極めを習得するのに何年もかかりそう……insulaさんは石の優秀な仕入れ屋さんでもあるわけですね。

そうですね。複雑な加工をしない分、主役である石を選ぶことに全神経を集中しています。

その石のもつ表情とか、光って表現してますけど、その石が持つ力。

うん、光がいいな、その石が持つ光っていうのをよく見ると、見えてくるので。

そういう石を集めるのに、一番力を入れてます。

7.JPG

 

(インタビュー②に続く)

Please share
Tweet about this on Twitter
Twitter
Share on Facebook
Facebook

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事