insulaさん(鉱物ジュエリーデザイナー)ロングインタビュー②
—LUPOPOで委託を始めた経緯は?
他の場所で展示をご一緒させてもらった作家さんにLUPOPOのことを聞いて。何度か2人展や個展をさせて頂いたあと、委託で置いて頂くようになりました。
元々はビーズを繋げてイヤリングを売るみたいな。いっぱい作っちゃったからちょっと売ってみるみたいなとこから始めて、
もっと自分にできること、LUPOPOの個展を通してみんなが喜んでくれることはなんだろうって思って指環を作るようになり、京都に引っ越して今に至ります。
LUPOPOとの出会いから、自分の表現したいもので生きていこうっていう決意を持てるようになって、そしてそれが可能になったって感じですね。
—「自分の表現したいもので…」というのは花井さん(LUPOPO店主)がよく語ってることですよね。
LUPOPOの好きなところはどんなところですか?
ドアを1枚隔てて、時間の流れが違うところ。
—あ、お能と一緒だ。(※インタビュー①参照)
たぶんそういうのが好きなんでしょうね。
世界って、多重だと思うんですよ。でも普段私たちに見えるのは、日常生活、仕事、とか、帰ったらご飯作んなきゃ、とかそういう目の前のことだと思うんですけど。
LUPOPOとかお能っていうのは、一歩入ったときに日常から解離させてくれるっていうのがいいところかなって。
ここで個展やってるとすごい勢いで時間が過ぎていくので、時空が違うのかなって思っちゃうくらい。
日常から離れて、自分の制作とか表現について考えるための時間が持てるのがいいなと思ってます。
—LUPOPOで個展を開催し続けていますが、個展のどんなところが好きですか?
一番は楽しみにして来てくれる方の、声を直接聞いて、お話ができることだと思います。
喜んでもらってるところとか綺麗って言ってくれるところを見ると、やってよかったなって思う。
あと自分のことで言えば、年にたくさん個展をさせて頂いてるんですけど、そのサイクルができてくると流れに乗って行ける部分と、次回どうしようって、自分のステップアップを短いサイクルで考えることができる。
もし思いつきでやって、その時々で違うギャラリー借りてだと、自分の道を見失いがちになってしまうので。
LUPOPOで定期的にやることで自分自身の成長を具体的に見ていくことができる、ってところかな。
—好きなことで生きていく世界に、組み込まれていっているってことですかね。
そうそう、そこから落っこちなくてすむ。
LUPOPOだと100%自分でやらなくて良いのも大きいですね。
一般的なギャラリーだと宣伝も集客も自分でやらなければいけないけど、LUPOPOだとお店がサポートしてくれるので、労力のかけ方が全然違う。
かなり世界観を作って下さってるし、宣伝も丁寧にやって下さるし、何よりも作品を丁寧に扱って下さるので。
まだ始めたばかりですけど、これで生きていこうってなったときにすごく力になって下さったんです。自分ひとりの力じゃ絶対趣味で終わってたかな。
—世界観づくりとか、お会計とかの実務も含めて助かってますと。
そうそう、搬入と搬出だけやればあとはおしゃべりしてればいいんだもん。
それからここでタロット占いしたいとか、笛のコンサートをやりたいと言ってもやらせて頂ける。自分ひとりでそれを他のハコ借りてやるんだったら死ぬほど勇気とお金がいるけど。
LUPOPOでは夢を一歩ずつ叶えさせてもらってるので、それはすごいことですよね。

—作家活動をしていて嬉しかった、印象に残ったエピソードを教えてください。
いっぱいあるけど、なんだろう。
最近嬉しいなって思うのは、私の作品を見て、忘れていた大事なことを思い出したって言ってくれるお客さんが増えてるんです。
たとえば私は指環の石に名前をつけてるんですけど、買ってくれたお客さんがその名前を聞いて「あ、ものづくりを教えてくれたおばあちゃんと同じ名前だ」とか。
他には、「昔おばあちゃんがくれたルビーの指輪、なくしちゃってからずっと似たようなのを探してて。insulaさんの作品で気になった指環があったから、これはなんの石ですかって聞いたらルビーだったから、あ、これはあの時の指輪かもと思って買いにきました」とか。
そんな風に大事なことを思い出してもらえるきっかけになると、もうこれはただの装飾品じゃなくて、その方達にとっては大事なひとかけらなんだなあって。その人の人生に少し関わらせて頂いているような気がして良いなって思いました。

—私もinsulaさんのジュエリーを見るまでは、子供のころパワーストーンとか、宝石屋さんの折り込み広告を見るのが好きだったなってことをすっかり忘れていて。
大人になってナチュラル系の地味なものばかり集めるようになっていたんですけど、あ、わたしキラキラも好きだったじゃん。って思い出しました。
そういうのすごい大事。
自分なんてこれでいいやとか、なくしちゃったけどまあ、しょうがないよね。って諦めてきたことっていっぱいあると思って。繊細な人ほど麻痺させてしまうというか。
—感覚にシャッターをするような感じですよね。
そうそう、それは子供の時はたぶん自分で受け止めきれなかったからなんだけど、大人になった今はその感覚があったほうが良い。
それを大事にしていくと、自分の好きなことで生きていくとか、そういうことに繋がるのかなって。
そういうことをインタビューで冊子になるんだったら、お伝えしたいなって。
例えばイチゴがあんなに好きだったのに、子供のとき親に「イチゴは高いからひとり3粒!」って言い聞かされて育ったから、「そっか。高いのか。私には分不相応なんだ」って我慢する気持ち、
—もう大人になって自分のお給料でいくらでもイチゴ買えるのに、無駄遣いな気がして買えないみたいな?
そうそう、カフェでランチはできるのに、子供の頃の夢を叶えるイチゴ1パックはなぜか買えない。買っても特売のイチゴしか買わない。っていうことを、人生の他の場面でもすごくやってる気がして。
わたしお金の話するの好きなんですけど、めっちゃお金の話しますけど(笑)、
たとえば自分はinsulaさんの指環を買いたいと思ってLUPOPOに来た。Twitterで見て、一番安いのなら買えるかもしれない、私はこのへんかな、このちっちゃい石のでいいわ、と思ってから店に来た。けど、どうしてもこの1番大きい石から目が離せない。
値段は倍近くするかもしれないけど、自分にふさわしいのは小さい石だと思ってたけど、でも全然違ったんだ。
みたいなのに気づいていくってすごい大事だと思って。

いや、別にいいんですよ。安い方の石が気に入ったならもちろんいいんだけど、でもなんか問答無用で石が「あなたには私でしょ!」って言ってくる時が時々ある。そういうのを体験して欲しい。
—こっちよりこっちのほうが好き、って思った感覚に、自分でお金を払えるかってことですよね。
そうそう、結構抗えない力でやってくるので。一目惚れみたいな。
毎日一目惚れするとか、毎日一目惚れしたものだけと一緒に暮らせたらすごい楽しいですよ。

「なにこれすっごい綺麗!」「キャーキャー、世界って美しいー!」と思うと、感動する気持ちがストレッチされる。
そうするとご飯食べてもおいしいし、感動するし、人にも伝えたくなるし、なんかこう、自分にも人にも良いものをプレゼントしたくなるじゃないですか。ものだけじゃなくて時間とか。
そういうのをいいよねってちょっと思ってます。
—「感動する気持ちをストレッチ」って良い言葉ですね。そういうきっかけとして、insulaさんの石はすごく良いアイテムな気がします。
profile——————————-
鉱物ジュエリーデザイナー insula(インシュラ)
神奈川の湘南出身、京都在住。指環を中心とした天然石のシンプルなアクセサリーを制作。石の持つ魅力を引き出すことを得意とする。年に数回LUPOPOで個展を行うほか、minneなどの通販でも活動中。
■Twitter:@insulas728 ■minne:minne.com/@insulas